皆様こんばんは。
キングダム7月19日に47巻が発売となりました!!
しかし7月19日東京発売のため、いつも通り九州地方は2日後の21日発売でした。こういうときは本当に首都圏に住んでる方が羨ましいです。
では47巻の簡単なあらすじ・感想・レビューを始めましょう。
目次
①山界の死王
②初陣!飛信隊の弓矢兄弟!山界の剣を援護せよ!
③VS燕国、趙国の大虎「司馬尚」登場!
④愚将か名将か、王翦の知略やいかに
①山界の死王
本巻から本格的に趙の第2都市「鄴」を攻める戦いが始まりました。この戦いは秦国の明暗を分ける重要な戦争である為、王翦・桓騎・楊端和の3軍連合による進軍が成されています。1軍だけでも先の黒羊戦のように大規模な戦争を仕掛けられる軍を3つも配置したことに関して、昌平君の言葉を借りるならば「3つの大局に同時に対応できる」点が一番の長所であるとのことです。
実際、前巻の最後で先頭を行く王翦軍に対し李牧が仕掛けておいた趙軍が襲いかかりますが、桓騎軍がこれに応戦、王翦の軍はまっすぐ鄴に向かって進軍します。このような何らかのイレギュラーが起こったとしても本質を見誤ること無く実行できる点が連合軍たる
さて桓騎軍及びその他の活躍もあり、滞りなく国門「列尾」へと到着します。列尾は秦国で言う「函谷関」であり、ここを攻略できないことには「鄴」を初めとした趙国の王都圏への侵攻は阻まれてしまいます。故に急ピッチで列尾を落とし、ここを砦化することで鄴攻略の要にするというのが絶対条件となるのです。そしてこの列尾の攻略を任されたのが我らが飛信隊と山界の死王・楊端和率いる山の民でした。
函谷関の戦い・蕞(さい)での戦いを見るに、追い詰められた国は死力を懸けて抵抗することがわかっています。これは他の国も同様で、文字通り自らが最後の砦となって戦うという責務を持った兵たちは尋常ならざる士気によって難局に挑みます。この難所を受けおった楊端和、どのように攻めるのでしょうか。信や河了貂の心配をよそに秦軍の先頭に立つ楊端和、その瞬間、山の部族たちから大歓声が沸き起こります。続けて叫ぶ楊端和、
見よ!敵が何かさえずっているぞ!
あんなものが雄叫びとは片腹痛い
本物の叫びとは何だ!
本物の戦士の雄叫びとはどんなものか!
この戦いは平地の者共との戦いだ
だが 我らの世界を広げる戦いにも重なっている!
ならばいつも通り この楊端和の強靱なる刃達を振り下ろし
抗う敵全てを肉片にして先へ進む!
あんな小城が この山界の王の刃を受けきれると思うか!
あんなものでっ!山の刃を防げると思うかっ!
平地に見せつけてやれ 百の山界の戦士達よ!
山の民の力を!
恐ろしさを!!
者共 血祭りだァァッ!!!
そう、楊端和の用意した答え、それは
敵を真正面からねじ伏せる
でした。士気の上がった敵をそれ以上の士気を以て叩きつぶす。単純にして明快、それでいて最も安定した戦法と言えるでしょう。ただし、それを空論で無く実戦する為には「圧倒的な武力」が不可欠です。つまり真正面から敵を倒すというのは楊端和と山の民、お互いに対する誇りと自信、そして絶対的な信頼があってこそ形を成すのだと考えられます。
②初陣!飛信隊の弓矢兄弟!山界の剣を援護せよ!
山の民が攻城戦を仕掛けている間、楊端和は側近のラマウジにバジオウと弓の扱いに長けた鳥加族の召喚を言い渡します。バジオウは山の民の中で楊端和に次いで第2位の実力を持ち、楊端和の「剣」と称される戦士です*。バジオウの部隊を壁に登らせ拠点を作り出すために鳥加族が弓で援護する形です。しかしながら多勢に無勢。楊端和は飛信隊へ協力を頼みます。
*大分前の話ですが第4巻、政と成蟜の対立の折、肆氏と政に最も信頼を置かれている「剣」として左慈と信の名前が挙げられていましたが、この時信と共に行動していたのがバジオウでした。政にとって「金剛の剣」が信であるならば、それは楊端和にとってバジオウと言えるでしょう。
そこで白羽の矢が立ったのが45巻末に登場し、46巻で新生飛信隊に加わった弓矢兄弟(蒼仁と蒼淡)でした。彼らは中華でもトップクラスの弓の腕前ですが人を射たことが無い点が一抹の不安でした。河了貂が飛信隊の軍師になったとき蒙毅から教わっていたことがあります。「軍師は初陣でその適性を試される」と。後方で軍略を練る軍師と実際に最前線で戦う兵士とでは意味合いが異なるかとは思いますが、「人を殺める覚悟(軍師の場合は味方をも犠牲にする覚悟も)」が出来るか否かを試される点においては同様かと思います。その覚悟が足りてなかった為、弓矢兄弟は戦場の空気に飲まれ、一方的に敵を殺すことに戸惑いを覚えてしまいます。
兄の蒼仁は覚悟を決め、手の震えがありながらもバジオウの援護を行い次々と敵兵を射殺していきます。しかし弟の蒼淡は思うように力を出せず、結局一矢も中てることは叶いませんでした。松左と崇原によると、この初陣のつまづきは弟の蒼淡だけでなく、兄・蒼仁にとっても若干の不安材料であるようです。弓矢兄弟は若くして親を亡くしている為、2人力を合わせて生きてきました。特に弟・蒼淡は今回のことで落胆してしまい、しばらく戦争の恐怖を引きずってしまうかもしれませんね。兄の蒼仁は敵を殺す恐怖さえ乗り越えたものの、大切な弟が戦線を離脱してしまうことで心にのしかかる重圧は弟以上に受けてしまうのかもしれません。
ただ河了貂が蒼仁をフォローしていました。飛信隊の戦士達は皆敵を殺めることに対する怖さを知っており、その「弱さ」と「優しさ」があるからこそ飛信隊は「強い」のだと。味方だけで無く敵の死をも双肩に宿して前へと進む。こうやって王騎将軍の遺した「志」は深く飛信隊の中に受け継がれていくのでしょうね。
さて、今回の弓部隊の活躍を経て僕が思うのは、飛信隊の弓部隊は今回のような「長弓(ロングボウ)」で構成された部隊しか無いのか?という疑問です。これまた第4巻の話ですが、肆氏の腹心であった魏興は「弩(クロスボウ)」による部隊を作っていましたね。長弓と弩は同じ矢を用いる点では共通していますが、その射程・威力・そして装填にかかる時間が大きく異なります。射程と威力は弩が大きく勝りますが、こちらは連射出来ない点が欠点です。その点長弓は人力が続く限り次の矢を準備できる為、使い手の技量に大きく左右される代わりに連射が出来ます。今回の戦では数に勝る壁の上の趙兵を減らし続ける必要があったため長弓で組織された部隊が使われたのだと考えられます。
余談ですが、弓の違いによって勝敗が決定した有名な戦いがあります。14世紀から15世紀にかけてイギリスとフランスが争った「百年戦争」ですね。特に「クレシーの戦い」においてイギリスが長弓、フランスが弩を用いましたが、長弓の連射の早さによってフランス軍は次々と兵が倒れていきこの戦いはイギリスの圧勝に終わりました。
③VS燕国、趙国の大虎「司馬尚」登場!
さて趙国は王都圏で秦と戦争をしている一方で、反対側では燕国とも戦わなければなりませんでした。燕国を率いるのは合従軍で参戦したオルドです。これに対し、趙国は「司馬尚」をぶつけます。司馬尚は前巻で現在の趙国三大天に比類する実力を持っていると言われていました(李牧は三大天になるよう薦めていましたが、司馬尚本人がこれを辞退しています)。
戦闘描写がされていませんので詳しくはわかりませんが、どうやらオルド軍2万人を司馬尚は5千人で迎え撃ち、燕国の侵攻を防いでいたとのこと。しかもそれだけで無く、別働隊を組織し、燕国の「貍」「陽」の2つの城を占拠しました。これによってオルド軍は燕国に帰らざるを得ない状況に追い込まれ撤退します。
4倍の敵相手に渡り合う司馬尚の軍も凄いとは思いますが、なんだかオルドが合従軍の時から見せ場が無く残念な扱いをされております……。王翦に司馬尚…相手が悪かったですね。
↑Google先生でオルドを検索した結果がこちら……。予測変換の1番目にこれはちょっとカワイソス……。
④愚将か名将か、王翦の知略やいかに
鳥加族と弓矢兄弟の援護射撃を受けたバジオウは圧倒的戦闘力によりすぐさま拠点を作り上げます。更に地多族に命じて門の開閉を司る場所を発見、門は開かれ飛信隊の追撃により列尾は半日も経たずに占拠されました。
山の民の強さがあるとは言え、国門がわずか半日で落とされたのには理由がありました。李牧の指示で列尾は意図的に守りづらい砦として築かれていたのです。部下からの情報を集め、その事実を察した王翦はすぐに列尾を発ち、数騎で鄴の視察に当たります。趙の第2都市「鄴」を陰から見た王翦は軍事都市たるその様に「完璧だ…」と言葉を漏らし、なんとその場で鄴攻略の軍略を練り上げるのでした。
列尾へと戻った王翦は軍の兵達に昌平君の策では鄴攻略が出来ないことを知らせ、今後は王翦の作戦によって鄴攻めを行うことを説きます。李牧は秦軍が王都圏から撤退すると読んでいましたが、王翦は王都圏に残り続ける選択をします。そして楊端和軍(5万人)を別働隊とし、趙の公孫竜率いる9万人の軍の相手としました。
王翦・桓騎の連合軍は楊端和軍を盾として鄴へ行軍しますが、突如王翦は鄴手前で攻撃の矛先を王都圏の小都市「吾多」へと向けるのでした。この行動は軍略に明るい蒙恬や河了貂にとっても奇怪な行動としか思えない所行です。吾多を占拠した王翦は更に奇怪な行動に出るのです。なんと「占領した都市の人々に一切の危害を加えず、食料だけを奪って城の外へ逃がした」のです。そう、王翦の狙いは兵糧を奪い取ることでは無く「民間人を城の外に出す」ことだったのです。当時の戦争観からすると考えられない行動に、信達若手の武将は疑問を抱きつつも同じことをするために次の城へまた向かうのでした。
さてこの王翦の意図はどのような所にあるのでしょうか。今後どのような軍略を以て鄴攻略を目指すのでしょうか。桓騎は王翦のことをこのように言っています。「あの野郎は負ける戦は絶対に始めねェ」。廉頗との戦いの際に王翦自ら言っていましたよね。「私は絶対に勝つ戦以外に興味は無い」。王翦が軍を起こしたと言うことはこの戦は絶対に秦軍が勝利(鄴を攻め落と)し、趙の王都・邯鄲の喉元へ刃を突きつけるのでしょう。今後王翦がどのように動くのか、僕が今の段階で考える選択肢は3つあります。
①王都圏の国民を全て邯鄲もしくは鄴へ向かわせ、王都圏の他の都市全体を秦軍の砦に変える。
②王都圏の国民を鄴へ向かわせ、戦意を削ぎ無血開城を促す。
③王都圏の国民を鄴へ向かわせ、鄴の兵糧をすり潰していき弱ったところを一息に攻め落とす。
大前提として王都圏にある9つの都市は全て落とすと考えられます。それを踏まえた上で最も重要なポイントは「危害を加えていない一般人は王翦に感謝しつつ城の外に出て行った」点かと思います。1番最初に上げておいて何ですが、おそらく①は早急に攻略しないと行けない点から考えると可能性は薄いです。鄴の様な大きな都市では無く小都市の守りをしながら鄴・邯鄲への攻撃を行うのは現実的では無いです。となると残るは②か③ですが、僕はこのどちらを選択するにしても民間人の中に桓騎の兵を紛れ込ませるのでは無いかと考えています。何故桓騎兵か、それは単純に変装が上手そうというだけなんですが()。スパイを紛れ込ませ、民間人の中に積極的に「王翦軍は抵抗さえしなければ絶対に虐殺を行うことは無い」というイメージを刷り込ませていく。そしてその団体が鄴へ着いたならば今度は鄴のあらゆる情報を仕入れていき何らかの形で秦軍本軍へと伝える役割を担うのでは無いかと予測します。また李牧は不必要な殺生を行わない、非常に慈悲深いキャラクターとして今まで描かれていますから王都圏の民を見殺しにすることは無いでしょう。その点を王翦は読んでこの作戦を仕掛けているのだと考えます。
李牧はキングダムにおいて知略の頂点に立つキャラクターです。今まで積み上げてきたその李牧が敗北するとしたら、それは王翦の知略に破れるのでは無く、「情」と「三大天」という(国民を守らなければいけない)立場によって追い詰められていくのでは無いでしょうか。
以上『キングダム』47巻の感想・レビューでした。
やっぱね久しぶりに楊端和とかバジオウ・タジフが出ると嬉しいですね。初期の仲間と共に最大の敵に挑むというのは非常にロマンをかき立てる胸熱展開ですよ。僕、最後ドヤ顔で今後の王翦の行動を予測していますが、外れたら顔真っ赤ですね。予想が当たってくれることを願いつつ、次の巻を楽しみに待つことに致します。
それでは今日はこの辺で。
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