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『まんがで読破 蟹工船』感想・レビュー

投稿日:2017年2月16日 更新日:

皆様こんばんは。

今日はタイトルの通り『まんがで読破 蟹工船』を読んでみましたので、僭越ながらその書評を述べさせて頂ければと思います。

※本記事では当該書籍のネタバレを含んでおります。また僕はもととなった『蟹工船』を読んだことはありません。まんがで読破シリーズで初めて触れました。

まず『蟹工船』ですが、読んだことは無くとも一度は名前を聞かれたことがある方も多いのでは無いでしょうか。言わずと知れた小林多喜二氏の著した、プロレタリア文学の代表的作品であります。

「プロレタリアート」とはお金持ちという意味で今の日本にも定着している「ブルジョワジー」の反対の意味、つまり労働者階級を指すドイツ語です。『資本論』『共産党宣言』を記したマルクスがドイツ人だったためドイツ語なんでしょうね。

さて予備知識はこの辺にして感想を書いていきたいと思いますが、最初にこの「漫画」を一言で表すと

勧善懲悪

これだけです。

登場人物は3人覚えとけば問題ないような気がします。森本、昭幸、浅川の3人です。

森本は本作品の主人公と言える存在で、貧困にあえぐ家族を養うために蟹工船に乗り込み、働き始めます。熱い情熱を持つ一方で仲間思いの優しさも兼ね備えています。

昭幸は周旋屋に騙されて蟹工船に載ってしまった青年で、嵐の中で海に投げ出されそうになった所を森本に助けられ、それ以降彼を慕っています。

浅川はこの作品で言うところの中ボス的な存在でしょうか。労働者に対し尊厳を無視した労働を、文字通り死ぬまで課す悪者として描かれています。

で、簡単にあらすじを説明すると、舞台設定は戦前の日本です。

高値で売れる蟹を船内で加工し、缶詰に出来る施設を備えた蟹工船の中での悲惨な生活に苦しむ労働者の苦悩の物語です。その生活たるや極寒の海オホーツク海で1日16時間労働、休日も無しでサボれば暴力は当たり前、更にご飯も満足にもらえず、病気にかかっても治療さえしてもらえない、挙げ句の果てに死んだら海に捨てられるという凄まじい状況です。物語の冒頭で

「おい 地獄さ行ぐんだで」

というフレーズが出てきますが、まさにその通りですね。

当然、浅川によるこんな暴挙を労働者たちが許すわけが無く、立ち上がりストライキを行うのですが1回目は失敗に終わります。数人だけで立ち上がったことがその要因でした。

それを踏まえて2回目のストライキには労働者全員が決起し、支配者の浅川を懲らしめるという流れでストーリーは幕を閉じます。

もともとの『蟹工船』を読んだことが無いので詳しくはわからないのですが、こんな感じでかなりあっさりまとめられています。

案外あっさりした物語だなという印象を受けましたが、これは今を生きる僕が読むと出てくる感想です。おそらく主義や思想を小説として表現する機会が無い時代においては非常に挑戦的な内容だったのだろうと思います。

また本作は漫画で表現されているため非常に文章が少なく、作品を「物語」として読むことに主眼を置いた描かれた作品であることは否めません。Wikipedia様の「蟹工船」の項目では「特定の主人公がいない」ことが特徴であると記されていますが、この漫画版の主人公はガッツリ森本です。やはり漫画で表現するためにはある程度の感情移入できる主人公が必要だったのでしょう。

-総評-

『蟹工船』がどんな作品なのかをどうしても知りたいのであれば、読むことをオススメします。しかし僕は読んだ後に勧善懲悪という言葉しか出てこなかったため、本当のところは元々の作品を読むべきです。

※ちなみに著作権が失効しているため、青空文庫様で無料で読むことは可能です。

最後に3人の人物紹介の欄で浅川を中ボスと評しましたが、この作品におけるラスボスは「資本主義」そのものです。その点については漫画の中でもぶれが無く表現されておりましたので、小林多喜二氏の「想い」は汲み取ってある作品と言えるでしょう。

さて、真面目に本の書評を書いてみましたがいかがだったでしょうか。勿論元々の『蟹工船』を読み次第レビューしていきますので、その際はまた読んで頂けると幸いです。

それでは今日はこの辺で。

 

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