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【レビュー】『読んだら忘れない読書術』

投稿日:2018年1月9日 更新日:

皆様こんばんは。

皆様、今まで何冊の本を読んだことがありますか?

ふむふむ、では質問を変えます。

今まで読んだ本を何冊くらい人に紹介できますか?

本の内容に関して他者と議論できると言い換えても良いでしょう。

いくら本を読んだとしても、内容が自身の血肉となっていなければ非常に勿体ないことだと思います。今日は精神科医であられる樺沢紫苑氏の著書『読んだら忘れない読書術』のレビュー、及び内容の紹介を致します。この本には精神科医として心理学を修学された著者の中で、体系化された「一度読んだら忘れない読書術」が記載されております。この本の内容は8つの章で構成されていますが、勝手ながら重複している内容を2つに絞り、まとめ上げた上で以下に概要をご紹介致します。また最後にこの本を読んでの感想を載せております。

1.本を読むことで得られるもの(P.22~74)

2.精神科医の読書術、基本原則3箇条(P.78~145)


1.本を読むことで得られるもの(P.22~74)

樺沢氏は本書の中で読書によって得ることが出来るものを以下の5つだとおっしゃっています。

①体系化された知識
近頃はインターネットが発達し、数多くの「情報」を選択・収集できますが、著者はネットで得られる情報はデパ地下の試食のようなものだと比喩されています。つまり知りたい情報を局所的に知ることは出来るけれども、それらは断片化されており体系化さえていません。本のように物事の全体像を把握した上で、順を追って体系的に学ぶことは出来ないのです。

氏は「情報」と「知識」の違いについても論じています。情報は1年経ってしまうと古くなるもの。知識は10年経っても古くならないもの。本を読むこととは、言わば本の著者がまとめあげ、事実や結果、事象から抽出されたエッセンスを享受することに他なりません。他社の失敗事例や成功事例の集大成とも言えます。一方で氏は情報を軽んじているのでは無く、そのバランスが重要だと論じています。1年経つと古くなるとは言え、それらは「今」を知る上では必要不可欠なものですから。

②時間
これはいわゆるHow To本と呼ばれるものに多く当てはまるかもしれません。深い意味は無く、該当する本を読めば時間が短縮できると言うことです。具体的に言えばFaceBookを始めた方が100時間かけ自分で試行錯誤を繰り返して機能を使えるようになるのと、FBに関する本を10時間読んで使い方をマスターするのとではどちらが効率的ですかという説明をされています。つまり「他人の知識はお金で買える」ということです。また本書の中にはどのようにして読むべき本を探せば良いのかということも記載してあります。

③仕事力
何故ライバルの彼はいともたやすく資料を作成することが出来、自分は戸惑ってしまうのか。その答えは知識をインプットした量とアウトプットした量が違うからです。多くの書物を読み、知識が血肉として頭の中で整理されている状態と、そもそもの知識が不足している状態とではスタートラインから違います。だからこそいきなり出された仕事に対してもライバルの彼は粛々とこなすことが出来るのです。これをキッチンスタジアムというテレビ番組に例えて説明されています。

④健康(ストレスや悩みへの対処法)
精神科医であられる氏は患者さんをカウンセリングするに際し、小冊子を渡すのだそうです。しかし次回の問診までにそれを読んでこられる方はほとんどいないのだとか。その理由は「それどころではない」から。本を読むことで自身の悩みに関するトラブルへの対処法がわかるにもかかわらず、普段読書しない方は本を読むという解決方法さえも思い浮かばなくなるそうです。医師としての経験を元に、様々な研究機関でのデータが論じられています。

⑤能力や頭脳の向上
頭の良さは天性のものに多く依存している。そう考える方は多いかもしれません。しかしながら最近の研究では、人間の能力は脳を鍛えることによって一生成長し続けることが出来るのだそうです。IQ(知能指数)以外にもEQ(心の知能指数)やSQ(社会性の知能指数)と呼ばれる要素があります。豊かな社会生活を営む上であった方が良いEQやSQは共感力の向上によって磨かれます。氏によれば共感力は小説を読むことで鍛えられるのだそうです。またそもそも我々は情報や知識のほとんどを言語から得ており、読書することで「言語能力」を磨くことが出来、結果的に頭が良くなるのです。

実はもう少し読書によって得られるものを氏は論じておられるのですが、ここは割愛させて頂きます。とは言え、この5つだけでも読書する意義は感じて頂けると思います。


2.精神科医の読書術、基本原則3箇条(P.78~145)

この章では著者が普段されている読書の方法について論じられています。その方法は「①記憶に残る読書術」「②スキマ時間読書術」「③速読よりも深読を意識する」の3つです。


基本原則①記憶に残る読書術
読書した内容を記憶に残すためにはA.アウトプット読書術B.脳内物質読書術の2つを用いて本を読んでいきます。

A.アウトプット読書術
簡単にご説明すると「本を読んだ翌日、3日後、1週間後に本の感想や内容を人とシェアする」という方法です。脳は「何度も利用される情報」と「心が動いた出来事」を重要な情報と判断して記憶していきます。前者の特性を活かすのがアウトプット読書術です。以下に具体的な方法についてご説明します。

Ⅰ.マーカー読書術
用意するものはマーカーとボールペンのみ!学生時代勉強する際にマーカーを使って線を引いたり、単語を何度も発音したりすることで内容を覚えようとされていた方は結構多いのではないでしょうか。コレ実は理に叶っていることで、字を読む作業とペンを持ってラインを引く作業、文字を書く作業、音読する作業は全て脳の別の部分で行っている作業なんだとか。つまりインプットと最初のアウトプットを同時に行うことと同義であり、脳を複雑に使用することで脳は活性化し、記憶に残りやすくなるそうです。

Ⅱ.シェア読書術
最初のアウトプットをマーカーとボールペンで済ませたら次は本の内容を人に話す、SNSを用いて発信するなどして感想や内容をシェアするという方法に移ります。読んだ本について話すわけですから当然、本の内容の復習になります。この時重要なのは「面白い」「ためになった」を連呼するのはダメで、具体的に本のどういう部分が面白かったのか、為になったのかを要約しながら伝えると言うことです。こうすることで本の内容が頭の中で整理され、記憶に残っていきます。追記して、著者は本を読んだ当日は感想程度にとどめておいて、書評を書くのは翌日以降にしているそうです。勿論反復して合うトップとするという意味もあるのですが、本を読んだすぐは感情が高まり「感情言語」が先行してしまいますが、翌日だとクールになり論理的な文章が書けるということなんです。これは古今東西多くの青少年が経験していることと思います。情動を伴って好きな人へラブレターを書いてみたは良いものの、翌日見返すと猛烈に恥ずかしい感情に襲われる感覚に近いのかもしれません(笑)。

と言っても最初から書評なんて書ける人の方が少ないわけですから、本を読んで心に響いた名言や気づき、そしてそれに対する感想を投稿するだけでも何もしないときに比べて残る知識量の差は明らかです。この時重要なのはアウトプットを前提にインプットをすることです。何か自分の意見を形に残すと決めたのならば知らず知らずのうちに気づきを得る姿勢になっています。

B.脳内物質読書術
簡単に言えば「人の感情を利用して内容を覚える」方法です。つまり脳内物質の分泌によって記憶力が増強するということです。例えば子どもの時に見た怖い番組を大人になっても記憶しているという方は多いのではないでしょうか。これは当時ノルアドレナリンが大量に分泌されていたため、何年経っても覚えているのです。同様に好きな漫画のシーンやコマ割り、キャラクターの表情や言葉を事細かく覚えていることが出来るのは、ドーパミンによるものだと考えられています。

実際に読書をするに際し、自分で脳内物質を出すことが出来るかと問われると難しいところです。であるならば脳内物質の発生要因を自分で作ってしまえば良いのです。そこで氏が提案されているのが「ギリギリ読書術」と「ワクワク読書術」です。

Ⅰ.ギリギリ読書術
ゲームをやっていると思うことですが、敵が簡単に倒せると面白くありません。一方で全く歯が立たなければこれまた面白くありません。勝てるか勝てないかそのギリギリのラインが面白いという方は多いと思います。ギリギリ読書術とはその理論を読書に応用したものです。つまり「本の難易度を上げる」または「読むスピードを上げる」ことでドーパミンを分泌させるという方法です。

Ⅱ.ワクワク読書術
好きな漫画の新刊を手に取ると一気に読み進んでしまうことはよくあることです。ワクワク読書術はこれを読書に当てはめます。つまり鉄は熱い内に打てということで、書店でビビッときた本をその日、または翌日までに一気に読むという読書法です。こうすることでドーパミンが分泌され、記憶に刻みやすくなるのです。


基本原則②スキマ時間読書術
3原則のうち読書の方法については上記の通りですが、実際に本を読む時間が確保できないという壁にぶつかってしまうこともあると思います。そんな時に読書の時間を産み出す方法が「スキマ時間読書術」です。以下にその方法を紹介致します。ちなみに著者であられる樺沢氏は仕事の傍ら1ヶ月に30冊を読破しているそうです。

A.制限時間を設ける「ウルトラマン読書術」
ご存知の通りウルトラマンは3分間しか地球上で活動できません。しかしこの制限が彼の能力を飛躍的に向上させているのかもしれません。つまり読書に制限時間を設けるのです。今日から3日間でこの本を1冊読み上げる。電車の中でこの章までは必ず読破する。このように目標を設定し、自分にプレッシャーをかけることでドーパミンが分泌され記憶する一助へとなるのです。

B.5分の頑張りを活かす「5分・5分読書術」
読書というと時間を作ってゆったりと読み込むというイメージがあるかもしれませんが、氏が推奨されているのは細切れの時間に読書をするというものです。具体的に人間が何らかの作業を行う場合「さぁやるぞ」という最初の5分と、「もう一踏ん張りだ」という最後の5分間に集中力が高まることがわかっているそうです。つまりこの理論をあてはめると60分読書の時間を取ったとしても、15分読書の時間を取ったとしても高い集中力を持続できる時間は同じ10分間ということになります。そうであるならば同じだけの時間を使うなら60分の連続した読書より、15分×4回の読書の方が効率的と考えられるのは明白です。

C.睡眠の力を借りて頭を整理する「熟睡読書術」
眠る前にインプットすると記憶につながるということを耳にされたことがある方は多いと思います。僕自身の話ですが、小学生の時は国語の教科書にある『スーホの白い馬』、中学の時は『竹取物語』を寝る前に読んだことで、翌日全て暗唱できたという実体験がありますので、これは確かなことだと思います。何故眠る前が良いのかと言えば、睡眠時はインプットが無いため記憶の衝突が起こらないからという理由です。僕たちの脳には起きている限り知らないうちに様々な情報が飛び込んできます。それを防ぎ、同時に頭の中を整理する睡眠を利用しない手は無いのではないでしょうか。

D.読書術とは時間術である
氏はなんとスマホもタブレットも所持されていないとのことです。なかなか衝撃的な事実ですが、通勤中に携帯でメールの返信を行うよりもパソコンで同じ作業を行った方が早いという理由のようです。そしてそもそも通勤中にスマホを触ること自体が時間の浪費であるとされています。スマホを使ってメールをチャックするのは電車がホームに来る前のほんの少しの時間で事足りるとのこと。他に月に2回の飲み会は参加するのに、それでいて時間が足りないというのは少し違うのでは無いかと。詰まるところ読書の優先順位をどこに据えるかで、無味乾燥な時間の浪費が自己投資になり得ると説いています。


基本原則③速読よりも深読を意識する
これは読書をする上で何を意識するかという話です。「深読という見慣れない単語が出てきますが、これは氏の造語であり速読と対に当たる言葉です。「精読」という言葉がそもそもありますが、これは一言一句丁寧に時間をかけて読むという意味で「読むスピード」にフォーカスしているようなので、「本から学びと気づきを得て、深いところまで理解する読み方」として「深読」という言葉を提案されています。

A.本は議論できる水準で読む
読書することで得られる多くのメリットは上記した通りですが、結局のところ本を読んだとしても内容を理解しておらず、行動に移すことが出来なければそれは読書したとは言えません。ですので本の内容をきちんと理解しつつ、著者の言いたいことを読み解く「深読」が重要なのです。氏の講演会に多くの読者の方々が足を運ばれるそうなのですが、「どこが面白かったですか?」と聞いても答えられない読者が多いそうなのです。折角「面白い」という感情を持ったのに、自分で言葉に出来なかったら悔しいですよね。読んだつもりという自己満足の世界からはオサラバしましょう。

B.「深読」を積み重ねていけば「速読」になっているから焦らない
「深読」によるインプットと、アウトプットを積み重ねていけばいつしか速いスピードで読めるようになっていますので一つ一つ段階を踏んでいきましょう。僕個人の話で申し訳ありませんが、僕は「速読」という読み方を正直したことが無いです。する意図もわからないですしね。受験で英語の長文を読んでいた時に速く読んだところで、結局頭に入ってなかったら問題は解けません。これも同じことだと思います。

以上本著の概要を一部ご紹介致しました。まだまだここには書き切れない「読むべき本の探し方」や「電子書籍の活用法」など様々なことが書いてありますので、気になる方はどうぞ手に取ってみて下さいませ。


感想

この本はページ数で言えば250ページあります。ページ数だけを見ると中々骨太なように思えますが、話し言葉で易しい文体で書かれていますので実際に読むとそこまで大変では無いという印象です。今まで両手で数えられる範囲でしか本を読んだことの無い僕でも(ただしWikipediaとか辞書を用いての調べ物は昔からめちゃんこしてます)スラスラと読むことが出来たのは、ひとえに樺沢先生の構成力があってのことだと思います。

本の内容としては、個人的には僕がブログを書くようになってから無意識に実戦していたことを言語化してくれた本だったという印象が強いです(偉そうなことを言って申し訳ありません)。僕の場合何らかの映画やアニメ、テレビ番組を見たときは、この作品はどのようにレビューしようか、得た知識を自分の持っている知識とどう関連させて文字に起こそうかというのを常に考えます。アウトプットを前提としてインプットを行うという考え方はまさにその通りだと思います。そういう意味では非常に取っつきやすい本でした。(全くの余談で「読書術」では在りませんが、金曜ロードショーなんかが放送されたとき僕はビデオに撮って貰って後で家族と一緒に見るようにしています。勿論1人で見ても良いのですが、ツッコミをしながら笑い合って鑑賞すると映画の中身がより鮮明に記憶できますので、こちらもオススメしたいです。)

ただ内容に関してもう一つの見方をするならば、この本は「少量の原液(著者の言いたいこと)」を水で何倍にも割っている構成と言えます。本を読んでいると何度も同じ内容が反復されているように感じるのです。これを「意図的に反復させることで読者へインプットを促す構成」と取るか、「話の流れを作る上でそういう構成になってしまった」と取るかは読者次第だと思います。

またアウトプットをSNSで行うにもかかわらず、スマホを見ない様にするという内容は趣旨が各々で異なるとは言え、実戦するのは難しいようにも感じられました。SNSで自身が発信した言動に対して何らかのアクションが来ることを期待することは自然なことだと僕は思うからです。

とは言え、この本が教えてくれる「アウトプットの有用性」や「スキマ時間を上手に作り、活用すること」の説明は例え話がふんだんに使用されており、うなずけるものばかりでした。ここでは僕個人が強引に本の内容をまとめ上げていますが、実際に手にとって読まれると数多くの大学や研究を根拠とした分析が為されており、非常に役立つ読書術が記されております。ここでは書き切れない内容が盛り沢山です。また精神科医という冠が付いていることもあって本の正当性は高いと考えられ、実際にAmazonでこの本を調べてみると数多くの方がアウトプットされています。この本で学んだことをしっかりと実戦されている方が多いと言うことの証明になります。

さて、この本、もとい樺沢紫苑氏の読書に対する思いが綿々と情熱的に綴られている本著ですが、僕が何よりも素晴らしいと思うのは氏がこの本を執筆為された本当の理由についてです。氏は執筆活動をされている傍ら精神科医として患者さんと向き合う日々を過ごされています。上述もしましたが、この時患者さんは先生のお渡しする小冊子を読まずに問診を何度も受けている方が多いそうなのです。これは読書の習慣が無いために、そもそも冊子に自分の求めている答えがあるはず無いという、ある意味での視野狭窄に陥っていることが災いしております。この現状をなんとしても打破したいと日本人に読書する習慣を根付かせることで、自主的に読書し自身の抱えている悩みを改善する一助にすることを目指されています。そんな樺沢先生は「日本人の自殺、鬱病を減らす」「病気で苦しむ人を1人でも救う」というミッションを掲げていらっしゃいます。勝手ながら僕のブログの副題でもある「人類をもう一歩先へ」という最終目標に近しいものを垣間見たので最後にご紹介させて頂きました。

最後になりましたが、皆様も本を読みましょう。そして読んだら感想をシェアしましょう。SNSで情報を発信するのが怖い・恥ずかしいという方は僕のブログになんでも好きなように書いて頂いて結構です。僕は僕で様々な人の意見や感想が聞けるので嬉しいですし、勉強にもなります。あと良ければ面白い本なんかも教えて頂けるとブログのネタになるので嬉しいです(白目)。共に学んでいきましょう。

それでは今日はこの辺で。


【文献】

『読んだら忘れない読書術』 樺沢紫苑著 サンマーク出版

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